PSIMの使い方-PMSM(永久磁石同期機)モデル①-

PSIM解説

本記事ではPSIMでのPMSMモデルを使い始めるにあたって、モデルの概要やモデルを使用する際、
スムーズにシミュレーションに入っていけるようにするためのパラメータ設定の方法、注意点
について解説しております。

PMSMの概要

PMSMの基本の電圧方程式は以下のように表されます。
※詳しい導出方法は別記事で解説します。

\(
\begin{pmatrix}
Vd \\
Vq
\end{pmatrix}=
\begin{pmatrix}
Ra+pLd&-ωLq \\
ωLd&Ra+pLq
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
Id \\
Iq
\end{pmatrix}+
\begin{pmatrix}
0\\
ωψ_f
\end{pmatrix}
\)

$$Vd:d軸電圧、Vq:q軸電圧、Id:d軸電流、Iq:q軸電流、Ra:巻線抵抗、\\
Ld:d軸インダクタンス、Lq:q軸インダクタンス、ψ_f:磁石磁束、\\
ω:電気角速度、p:微分演算子$$

また、この時の出力トルクTは以下のように表されます。

$$ T = Pn\{ψ_f+(Ld-Lq)Id\}Iq\\Pn:極対数$$

PSIMのPMSMモデルについて

PSIMのPMSMモデルはElements ⇒ Motor Drive Module ⇒ Permanent Magnet Sync. Machine
と選択していくことで開くことができます。
モデルをダブルクリックすると設定画面が開きます。

Rs: 巻線抵抗(Ω)
Ld: d 軸インダクタンス(H)
Lq: q 軸インダクタンス(H)
Vpk/krpm:線間のピーク誘起電圧定数、磁石磁束に関係するパラメータ
No. of Poles P: 極数
Moment of Inertia: 慣性モーメント J (kg*m2)
Mech. Time Constant: 軸の時定数
Torque Flag:トルクの出力フラグ(1:出力あり;0:なし)
Master/Slave Flag: マスタ/スレーブモードのフラグ (1:マスタ,0:スレーブ)

ここで、電圧方程式の中に出てくる磁石磁束を直接設定していない点について解説しておきます。
Vpk/krpmを設定することにより、磁石磁束を決定していますが、以下の式から設定したい磁石磁束に応じてVpk/krpmの値を計算しておく必要があります。
※特に磁石磁束は、dq軸上での定義のため、√2/3をつけている点に注意してください。
※また、Pは極数を表しています(極対数ではありません)

$$Vpk/krpm = \frac{ψ_f・π・P・1000√3}{60}・\sqrt(\frac{2}{3})$$

今回は磁石磁束=1.0Wbを設定しましょう。上式からVpk/krpm=296.19219となります。
その他の設定値も以下のようにしましょう。

Rs: 0.5(Ω)
Ld: 0.027(H)
Lq: 0.027(H)
Vpk/krpm:296.1921959
No. of Poles P: 4
Moment of Inertia: 0.0179 (kg*m2)
Mech. Time Constant: 10
Torque Flag:1:出力あり
Master/Slave: 1:マスタ

PMSMモデルは単独では動作しないので、負荷側のモデルを作成していきましょう。
今回は一定速度で回転している状態の特性を見たいので、定速度負荷と速度を検出するための速度センサを下図のように接続してみましょう。
なお、今回は定速度負荷として3000rpmを設定することにしましょう。
定速度負荷は設定した速度を維持する負荷です(単位はrpmで設定)。また、速度センサを接続しておくことで、速度情報を観測できます。

動作確認

負荷側を一定速度で回転させて(つまりPMSMに機械入力を与える状態)、PMSMの端子電圧を観測することにより、正常に磁石磁束(Vpk/krpm)の設定ができているかを確認してみましょう。
※この時PMSMは発電機動作していることになります。
三相側の端子は開放して、U、V、Wそれぞれの線間電圧のみをシミュレーションにより求めてみます。
各線間にそれぞれ電圧センサを接続してシミュレーション開始ボタンを押します。
すると、下図のようにエラーメッセージが出ました。
U,V,W三端子とも開放状態なのが、良くないようです。

そのため、U,V,W端子それぞれに下図のように100kΩ程度の大きめの抵抗を接続しておきましょう。
抵抗値を大きくするのは開放状態を模擬したいためであり、抵抗に電流が流れその電流による
電圧降下の影響を極力無視できるようにするためです。

結果、正常にシミュレーションが完了して、以下のような波形が得られました。
速度は3000rpm固定、三相電流はほぼ0Aで開放状態を模擬できている、と考えられます。

線間電圧をFFT解析して基本波成分の大きさを確認してみます。
振幅:888.243V⇒628.08V(dq軸上の電圧:dq軸電圧は線間実効値領域に換算されているため)
シミュレーションでは端子開放(模擬)状態、つまり電圧方程式上はId=Iq=0のため、
発生する電圧はωψfの成分のみとなります。
これをもとにωψfを計算すると、、、ω=2πfだから628.318rad/s,ψf=1.0とするとωψf=628.31V
つまり、628.08/628.31=99.96%より、ψf=1.0に設定できているといえます。

以上がPSIMでのPMSMモデルの概要とモデルを使用する際のパラメータ設定の方法、注意点、シミュレーション結果の解説になります。

お疲れさまでした!

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