フィードバック制御解説~なぜフィードバック制御が必要なのか~

制御工学

本記事では制御の分野で多用されるフィードバック制御の概要や具体例を説明した後、フィードフォワード制御との比較等からなぜフィードバック制御が必要であるのか、やフィードバック制御の一般的な使われ方について解説をしています。

フィードバック制御概要

フィードバック制御とは

フィードバック制御とは工学の分野で機器やシステムを制御する際、しばしば利用される制御方法の一つになります。
基本的な原理は機器やシステムの出力結果を目標値と比較、その比較結果を基に機器やシステムへの入力を決定することです。

具体例(エアコン,冷房)


フィードバック制御の具体例として、エアコン(冷房として動く場合)を対象に解説します。
下図の手順の通り
① リモコンで設定温度(目標値)をエアコンへ送信。
  エアコンは送風機で送風する量を変えて温度調整を行いますので、
  設定温度(目標値)はエアコン内部の送風機の制御器へ送られます。
② 温度センサで室温を検出
  送風機の制御に用いるため、検出した温度も制御機へ伝えます。
  ※これをフィードバックといいます。
③ 設定温度と現在の室温を比較、比較結果から送風量を決定
  冷房として動く場合、現在の室温が設定温度よりも高ければ、
  室温を下げるため送風量を増やす必要があります。
  逆に室温が設定温度よりも低ければ送風量を抑えていきます。
④ 送風する
  ③で決まった送風量を基に実際に送風機を動かして送風します。

以降は②~④を繰り返して、エアコンの送風量を調整していくことによって、設定温度に室温を近づけていくことが可能になります。

このように、システム(エアコン,今回のケースでは送風機)の出力結果(送風した結果の室温)を目標値(設定温度)と比較して、その比較結果を基にシステム(送風機)への入力(送風量,送風させたい量)を決定する制御のことをフィードバック制御と呼びます。

エアコンの温度調整の仕組み

なぜフィードバック制御が必要なのか

本章ではフィードバック制御と並んで制御の分野で多用されるフィードフォワード制御のメリット/デメリットについて解説を行い、これらを踏まえた上でフィードバック制御の必要性について解説していきます。
※フィードフォワード制御:
 システムの状態を目標値通りに制御するための制御手法。
 フィードバック制御とは違い、予め計算しておいた指令値を基に、
 一方的にシステムへの入力を行う。

フィードフォワード制御のメリット/デメリット

以前の記事でモータのフィードフォワード制御について解説しましたが、改めてフィードフォワード制御のメリットを以下に示します。
【フィードフォワード制御のメリット】
 システムの内容に応じて、予めシステムに与えるべき入力を計算しておけば所望の状態に制御可能
  例えばモータの場合、パラメータ(巻線抵抗やインダクタンス、磁石磁束)や
  動作点(周波数、電流等)を制御器が把握できていれば、これらを基に予め、
  モータに与えるべき指令値を計算するのみで、所望の状態に制御できる。

このように予め指令値を決めておけば比較的容易にシステムを制御できるメリットを持つ反面、以下のようなデメリットもあります。
【フィードフォワード制御のデメリット】
 □実際のシステムの内容と制御器が把握しいる内容に誤差があった場合、所望の状態に制御できない
  これもモータを例に解説すると制御器が把握しているパラメータに誤差があった場合、
  例えば制御器が把握しているインダクタンスが実際のモータのインダクタンスよりも
  20%小さい値だった場合、間違った指令値をモータに与えることになってしまうため、
  所望の値に制御することができなくなってしまいます。
 
 □システムの出力結果を監視していないため、目標値とずれがあっても修正不可
  上記のような理由で所望の値に制御できなかった場合、フィードフォワード制御では
  システムの出力結果を監視してシステムの入力を決定しているわけではないため、
  これ以上の対処ができず、目標値とシステム出力のずれが永続的に残り続けることになります。

フィードバック制御の必要性

上述のように、フィードフォワード制御はシステムの内容を基に予め入力(指令値)を決定しておくのみでシステムを所望の状態へと制御できる一方で、現在のシステムの状態の監視(検出)を行っていないために、目標値とシステムの出力結果が異なっていた場合、対処できなくなってしまいます。

これに対して、フィードバック制御では目標値とシステムの出力結果を比較して、システムへの入力を決定しているため、基本的には目標値とシステム出力結果をずれなく制御できるようになります。

ただし、フィードバック制御のみだと、目標値とシステムの出力結果を比較した後で、システムへの入力を決定することになるので、フィードフォワード制御のように予め入力を決めている制御手法と比べると応答速度の面でやや劣ります。

そのため、フィードフォワード制御でシステムへの入力を決めておき、これで制御しきれない分(目標値とシステムの出力結果の誤差として現れる分)をフィードバック制御で補う、といった使い方をするのが一般的な制御方法となります。

以上がフィードバック制御の概要、フィードバック制御と並んで多用されるフィードフォワード制御のメリット/デメリット、これらを踏まえた上でのフィードバック制御の必要性の解説になります。

お疲れさまでした!




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